ミオのイチゴ・いちえ

人生は一期一会、一世紀の4分の3を生きて思うことを書いてみようと思いました。

幸せな国デンマーク WHO幸せ度ランキングが物語る

 

WHOが2012年から3月21日を国際幸福デー「The International Day of Happiness」と定め、世界100位までの幸せ度ランキングを毎年発表している。

9回目となる2021年度は、新型コロナ禍が世界中を覆ったが、1位は4年連続のフィンランド、2位はデンマーク。2012年調査開始以来フィンランドデンマークは1位、2位を交互に繰り返し、北欧5か国(デンマークフィンランドノルウェースウェーデン)は常にトップ10に入っている。他の常国は、スイス、アイスランドニュージーランドといった国々である。

それに比べて日本は…?残念な国!といわざるを得ない。なぜだろう?

行ってみたい国・美しい国・清潔な国・礼儀正しい国民・経済の豊かな国・時間を守り勤勉な国民、等々どれをみても誇らしいニッポン。なのに---、なぜ---?
ランキング順位を年ごとに見てみると、2021年56位、2020年62位、2019年58位…、

えっ、ウソ!と思わず声が出てしまう。

 

WHOの幸福度調査は約150か国以上の国や地域を対象とし、6項目の0から10段階の評価の平均値(もっと専門的な計算法で割り出す)方式。

1、人口一人あたりのGDP

2、健康寿命

3、社会支援:ソーシャルサポート、困ったときに頼る人、親せき、友人がいるか

4、人生の選択度の自由:人生で何をするかの選択の自由に満足しているか

5、寛容さ・気前の良さ:過去一か月の間にチャリティなどに寄付したことがあるか

6、社会の非腐敗度:不満・悲しみ・怒りの少なさ、社会・政府に腐敗が蔓延しているか

 

1、2は国策で個人主観ではないとして、3の社会保障制度は国策だが、困ったときに頼る人、友人がいるか、というのは個人的主観だ。4の人生の自由度、5の他者への寛容さ、6の国への信頼度は個人主観となる。日本人の内向き思考、ネガティブ感情、頻繁にマスコミをにぎわす政治家の贈賄事件や公的立場にいる人物の倫理観の欠如、不平等感などといった社会環境面が反映しているのではないだろうか。

 

2021年5月20日発行した日本大学危機管理部教授、日本思想史専門家・先崎彰容氏の著書「国家の尊厳」(新潮新書)を参考にしながら、まず2020年明けから始まった新型コロナパンデミックに対応した日本とデンマークの違いから見ていきたい。(参考:デンマーク在住の元新聞記者、井上陽子さん記者より(ネット情報)

 

*紙による人海戦術の日本とオールデジタルのデンマーク

 :日本:4月、緊急事態宣言発令、全国民一人当たり10万円の支給が発表。問題はこれからだ。政府が発表してから国民全員の手に届くまで一体どのくらいの時間がかかったのか。リーマンショックで景気が一気に低落した2008年(平成20年)以降、政府はマイナンバー制度を導入したが、カードの普及率は10パーセント台で停滞した。銀行口座と紐づけが検討されると、「国家によりプライバシーの侵害と個人資産の把握だ!」「個人の権利を重んじ、国家権力からの拘束の拒否、戦後日本の民主主義を守れ!」という野党はじめ、リベラル派やメディアの大合唱が連日続き、とん挫した。12年後2020年新型コロナ禍で再び国民は危機に立たされた。不要不急の外出禁止(正確には自粛というお願いだが)と抱き合わせで全国民に10万円の給付金支給が決定した。普及率10パーセントのマイナンバーカードを持った人たちはオンライン申請が可能、持たない人は自治体からの給付金受給の申請用紙が送られてくるのを待つ。それ!マイナンバーカードを作ろう、と市役所に駆け付けた人々の長い順番待ちの列がニュースで放映された。しかしである。デジタル化という新時代に合ったのはここまでだった。オンライン申請を受け取った自治体は、データを印刷、住民基本台帳と照らし合わせるという昔ながらの紙作業での手続きを延々と行ったのである。役所の職員は長時間勤務でくたくた。マイナンバーカードと銀行口座と紐づけされていないため、本人の手元に10万円が届くのは2008年の定額給付金支給と同様に数か月以上も待つ羽目となった記憶はまだ鮮明である。先崎氏は言う。例えば非正規雇用で3人の子供を持つひとり親の家庭を想定してみよう。もう給料が入らない、収入のめどを絶たれた。貯金で食いつなぎながら10万円の給付金が来るのを待つしかない。それがあと10日、1か月待てばいいのか、いや、2か月になるのか、3か月もう待てない…、いったいいつまで待てばいいのか、どこに、誰に、問い合わせればいいのかわからない。こういう切羽詰まった人たちの不安と心配と怒りとイライラが目に見えてくる。先が見通せない不安である。それゆえに家庭内暴力や自殺に追い込まれる可能性さえある。

*国家から個人の自由を奪われない、という自由の選択か?

*非常時において国に私権を守ってもらうことにより、即座に現金が手元に入り暮らしの安心が確保される、という自由を得るか?

日本はこの選択が問われたのである。

 

 :デンマーク

デンマーク政府は比較的早い段階から、ロックダウン(国家権力による強制的手段)で感染者数をおさえた。次に大規模な検査体制を整え、「コロナパス」というアプリを入れたデジタル証明を整備し国民全員が持ち、利用するようにした。

コロナパスは、

・ワクチン接種済。(ワクチンを接種するか否かは本人の意思にゆだねる)

・72時間以内に受けたコロナ検査で陰性。(PCR検査と簡易検査のどちらか)

・陽性判定から14~180日以内。

のいずれかであることを、アプリで示す。これがないと、カフェ、レストラン、美容室、図書館、等々、どこにも行けないようになっている。しかも、デンマーク語、英語、フランス語の切り替えが簡単にできる仕様だ。

 *国が国民を管理するシステム導入の歴史(社会民主主義の発想をベースとした)

 ・1968年:「CPR番号」システムを導入。国民一人一人に番号が付与(生まれると同時に)、生年月日・性別・居住所・学歴・職業・銀行口座などが紐付けされる。社会保障や医療保障、税金の管理、政府からの払戻金、育児資金、等日常生活に不可欠なCPR番号カードとなる。

 ・1970年代からオフィスにコンピューターが普及、データベースの構築、蓄積が進む

 ・1977年医療記録システムが開始。電子カルテに患者の情報を入力、その全記録が一つのシステムで一元化されるようになった。これにより過去の自分自身の健康状態を把握できる。子供が受けなければならない、はしか、ポリオ、風疹、といったワクチンの接種

時期をPCやスマホで通知してくれる。

 ・2011年財務省の下にデジタル庁を設立。電子政府システムを構築。

   *認証:電子署名

   *コミュニケーション:公共機関からの連絡を電子的に受け取れる電子私書箱

   *金銭:1つの銀行口座を届け出る義務があり、政府からの金銭給付に利用

   *取引:電子請求のデジタルインフラで、電子的に請求書や文書の受け渡しを行うオンラインシステム。公共機関との取引では利用必須。見積もり書・請求書・請求書に基づいた支払、税金申告・支払いなど、とぎれのないシームレスでワンストップ(一か所)に処理できる。

 ・何故、電子政府は国民に浸透したのか?

 デンマークのインターネット利用率:2017年度において、55歳以下は100%、65~74歳で93%、75~89歳で69%である。コロナ禍の今においてはもっと利用率が上昇しているはずだ。デジタル庁が設置したeBoksという窓口を通して政府とのコミュニケーションを利用し、情報を入手している。高い税金を納めている(収入の約50~60%)デンマーク国民は北欧社会民主主義の優等生として、政府に「権利の平等」の行使を求め、その要求に寄り添うように都度、設計・デザインがなされている。つまり、国民のより良い暮らしのために国家の経費削減(国会議員の給料は)、脱税や不正防止に電子政府は役立っていて国民の政府に対しての信頼度が高い。

 

何だか、ため息ばかりが出てしまう。首相はまだ41歳という若くてすらりとした北欧系美人、子供たちとの新型コロナ対策についてオンラインでの、ユーモアがあってわかりやすいスマートな会話の様子などを見ていると、ついつい日本と比較してため息が出てしまう。

しかし、日本は日本、20201年菅総理の肝いりで発足したデジタル庁、またワクチン接種のスピード感、うん、うん、やるときはやってくれる、と応援したくなる。

がんばろう、ニッポン!イェーィ

 

 

幸せの国デンマーク・その2

 

ナチスドイツ北欧大侵略』 なぜデンマークはそういとも簡単に国境を明け渡したのか?

1939年、デンマークとドイツは不可侵条約を結んだ。だからその1年後、よもやドイツ軍が国境を破って侵入するとは考えていなかった。お人よし!楽天家!それがデンマーク人の気質かな!とも思ってしまうが。それにしても不可侵条約を違反したわけなのに、デンマーク国王、首相が抗議もせず、大した抵抗もせずにわずか数時間で降伏したのか、これはこの国デンマークの過去の歴史をさかのぼってみないとわからないことで、今後のシリーズで書くことにする。

ナチスドイツの占領下、『ヒットラーカナリア』と揶揄されたデンマーク人が素晴らしい働きをした。1943年8月、ナチスドイツ軍がデンマーク在住のユダヤ人を移送するという情報を地下組織のレジスタンスが知る。即座に地下組織(レジスタンス)が救援活動を計画、それを市民、デンマーク警察、教会、漁民等が積極的に協力した。そのおかげでわずか3週間という短時間の内にデンマーク在住のほぼすべて、7千人のユダヤ人と7百人のユダヤ人以外の親戚(ユダヤ人と結婚したデンマーク人家族など)を、秘かに各漁師町へ移動、匿い、小さな漁船で何艘も闇に紛れ、何度も往復してスウェーデンへ送り届けた。中立国であるスウェーデンは、難民として受け入れ終戦まで保護した。しかし約5百人のユダヤ人が捕らえられボヘミアのゲットーに移送された。デンマークは彼らの居所を突き止め強く抗議し、この5百名はアウシュビッツに移送されず生きて終戦を迎えた。

1943年8月以降ヨーロッパ中のユダヤ人を何カ所かのゲットーへ移動させるという悪夢が始まった。そして最終的には種の根絶(ホロコースト)、つまりアウシュビッツ強制収容所送りが行われた。

もしアンネの日記アンネ・フランクがオランダでなくデンマークにいたら、彼女の命は救われただろうとつい考えてしまう。

リトアニアの日本総領事だった杉原千畝氏は、同じ頃ユダヤ人のために日本行きのビザを発行し2139人の命を救った。『命のビザ』と呼ばれている。日本政府はドイツを怒らせたくなくて及び腰、杉原氏を叱責した。彼個人の責任で成し遂げた偉業だ。

ユダヤ人を救った動物園・ヤンとアントニカ物語』これは映画になり、私もこの映画を見たが、ポーランドでの話だ。私設の動物園の夫婦が3百人のユダヤ人を園内の地下にかくまって守り抜いた。

個々にはユダヤ人を守る人たちがいたが、国を挙げて組織的に、しかも国民の民意によってユダヤ人のほぼ全員を助けたのはデンマークだけだ。         

f:id:asaokamio:20210522194552j:plainアンネ・フランク

 

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アウシュビッツ強制収容所

 

幸せな国デンマークって、どんな国・その1 映画「エイプリル ソルジャーズ ナチス北欧大侵略」

その1 映画「エイプリル ソルジャーズ ナチス北欧大侵略」

 知人が紹介してくれたデンマーク映画「エイプリルソルジャーズ ナチス北欧大侵略」をYouTubeで見た。何だか未知の国の初めてのスナック菓子袋を、食べてみてごらん、と渡されて恐る恐るかじったところ、何この味!変な味、なんかへん、と手を引っ込めたものの、気になってもう一度手を袋に突っ込んで口に運ぶ。だがそのうち慣れてきて、こういう味もあるんだ、と妙に納得しながら気がつくと袋の中は空っぽになっていた、そんな映画鑑賞の感想だった。

じゃー、もうひとふくろ、どう?といわれたら、うーん、もういいかな、というだろうと思うけど。

この映画をきっかけに、デンマークってどんな国民?どんな思考をする人たち?と興味がわいてきた。なので結構な日数をかけて調べ、(今も継続中だが)知らなかった未知の国デンマークがぐっと私に迫ってきた。あるいは知らなかったのは私だけかもしれないが、一応自分なりに納得したものを書いてみたいという気持ちがむくむくと起こりブログを始めた次第だ。

まだまだ知りたくてデンマークに関しての本を数冊図書館で予約中、なにせ小さな市の故、在庫がなく…、待ちきれなくてアマゾンで注文をし、それらを読めばもっとデンマークのことが好きになるに違いない、そんな予感がする。

ちなみに実存主義の先駆者である哲学者キルケゴールデンマーク人だと知った。あとアンデルセンデンマーク人。児童文学のノーベル賞といわれる国際アンデルセン賞がある。1994年にはまど・みちおさん、2014年「精霊の守り人シリーズ」等の作家上橋菜穂子さん、2018年「魔女の宅急便」等の作家角野栄子さんが受賞している。私は上橋菜穂子さんの守り人シリーズの大ファンだ。魔女宅をはじめ宮崎駿アニメは親子孫三代で見ている。

映画は実際1940年4月9日早朝、ドイツナチス軍はデンマークノルウェーに突如侵攻した「ヴェーザー演習作戦」の実話。ドイツ軍の目的はノルウェーにあり、デンマークは途上の足場の役割、全く問題視していない。戦争映画を作るとしたら、英国に亡命政府まで作り果敢に戦ったノルウェーを描いたほうがおもしろいだろうに、と思うけど、これはデンマークの手によって作られているから、舞台はデンマークということは当然のこと。  

装甲車、戦車、歩兵隊が国境を突破してくるのに、迎え撃つ国境守備隊はバイク隊と自転車部隊、まことに手薄でお粗末だ。援軍が来る、というのを頼りにとにかく戦うしかない。しかし、デンマーク政府は勝ち目がない戦はしないという方針かどうか、国境突破から約数時間余りで条件付きの降伏。正確には5時30分国境付近での戦闘開始から8時32分に条件付き降伏をしている。そのことは前線にいた自転車部隊には無線が入らず連絡されていない。最後の一発の銃弾がドイツ軍の装甲車をちらっとかすめ、少尉は、「終わりだ!」といって手を挙げて降伏する。彼らを引き取ったドイツ軍の少佐が、「なぜ戦ったのか?2時間前にデンマーク国王は降伏したのに」とつぶやくように聞く。デンマークの少尉は「知らなかった」と首を横に振るのみだ。それで映画はあっけなく終わり。

早々の降伏のおかげでナチスドイツはデンマークには寛容で、戦争半ばぐらいまではナチスの徹底した支配下に置かれずに済んだことは、ホッとする。英国、皮肉屋のチャーチル首相は、『ヒットラーカナリア』とデンマークのことを揶揄している。

映画のシーンに、農家に隠れてしばらく体制を整えるシーンがある。農家の老婦人が、「ドイツ軍が通過するまで納屋に隠れたらどう?若い兵士の手が震えてるじゃないの」という申し出に、少尉は「自分たちはデンマークの国を守る義務がある」と答えるが、老婦人は、「20年前はここはドイツの領土だったの。生きてさえいればいいじゃない」という。しかし、少尉は無言。しばらく間を置き、部下の兵士たちに「行くぞ」と声をかける。それを戸口まで出て見送る老婦人。また後退する途中の休憩の時、少尉が一番若い兵士に、「恋人はいるか?」と尋ねる。うなずく彼に「必ずこの夏には君のフィアンセとデートできるようにしてあげるよ」という。トラックで後退するシーンでは、運転する兵士が、「もし兵隊に入っていなかったら自分は妻を得て、たくさん子供を持ち、食料品店でも営むのが望みだった。平凡な生活が一番です」と少尉に答える。運転した兵士は戦死するが、捕虜になった少尉以下これらの兵士たちが短期間で釈放され故郷に帰還できただろう、と思わせたのはホッとする。

 負け戦とわかっていても捕虜になるという選択を屈辱的と考える日本人。最後の一発の銃弾を特攻精神で相手を倒して自らも散る道を選ぶ日本人。なぜ?デンマーク人はこうもあっけなく?と思うのはわたしだけだろうか・・・。(つづく)

 

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デンマーク自転車小部隊



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ナチスドイツ装甲車部隊